POA(プロセス指向アプローチ)とは?業務フロー可視化の重要性
DefinitionPOA(プロセス指向アプローチ)とは、「業務の手順(プロセス)」を設計の中心に据え、誰が・いつ・どう動くかを可視化してからシステム化する手法のことです。
TL;DR (要約)
POAは、業務をプロセスとして捉え、可視化→課題特定→標準化→自動化までを一貫させる考え方です。最初に例外処理とボトルネックを把握すると、投資対効果が出る領域から着手できます。フロー図は“運用できる粒度”で作り、改善を継続できる形にします。
この記事でわかること
- POAとは(業務をプロセスで捉える)について学べます
- なぜ可視化がDXの初手になるのかについて学べます
- フロー図の作り方(現状→例外→KPI)について学べます
- 課題の見つけ方(ボトルネック/ムダ/属人化)について学べます
- 標準化・自動化へつなぐ設計について学べます
- よくある失敗と回避策について学べます
- チェックリスト(着手前に揃える)について学べます
POAとは(業務をプロセスで捉える)
システム設計のアプローチには、大きく分けて2つの流派があります。
| 比較軸 | DOA (データ指向) | POA (プロセス指向) |
|---|---|---|
| 設計の起点 | データ(「何」を扱うか) 例:顧客、商品、在庫 |
プロセス(「どう」流れるか) 例:受注、承認、出荷 |
| 強み | データの整合性・再利用性が高い。 システムが堅牢になる。 |
業務の流れが見えやすい。 現場担当者が理解しやすい。 |
| 弱み | 業務手順の変更に柔軟に対応しにくい場合がある。 | データ項目が重複したり、整合性が崩れやすい。 |
| 向いている領域 | 基幹システム (ERP)、マスタ管理、会計システム。 | ワークフロー、SFA/CRM、業務改革 (BPR)、RPA導入。 |
| 成果物 | ER図 (実体関連図)、データディクショナリ。 | 業務フロー図 (BPMN)、DFD (データフロー図)。 |
DXや業務改革の文脈では、DX推進ガイドでも触れた通り、まず「現状の業務」を可視化する必要があるため、POAからのアプローチが必須となります。
なぜ可視化がDXの初手になるのか
SaaS全盛の現代において、スクラッチでシステムをゼロから作る機会は減りました。代わりに「既存のSaaSに合わせて業務を変える」ことが求められます。
しかし、自社の業務フローが可視化されていない(ブラックボックス化している)状態では、「どのSaaSが適合するか」も「どこをSaaSに合わせ、どこを残すべきか」も判断できません。
POAによって業務フローを可視化することは、システム導入の「地図」を手に入れることと同義です。
フロー図の作り方(現状→例外→KPI)
業務フロー図を描く際、国際標準規格であるBPMN (Business Process Model and Notation) の記法を参考にすることをお勧めしますが、厳密すぎると誰も読めなくなります。
以下の5つのステップで作成します。
- 関係者・役割(レーン)の定義:
「誰が」登場するかを洗い出し、縦軸(スイムレーン)を用意します。(例:営業、経理、上長、顧客) - ハッピーパス(正常系)の記述:
一番頻度が高い「すべて上手くいった場合」の流れを一本線で描きます。これで骨格ができます。 - 例外・分岐(条件)の追記:
「在庫がなかったら?」「承認否認されたら?」という分岐(ひし形)を書き加えます。システム化の難所はここに潜みます。 - 課題・KPIのマッピング:
「ここで3日滞留する」「転記ミス多発」といった課題を吹き出しで追記します。 - 合意形成と承認:
関係者に見せ、「現実はこうなっていない」というフィードバックを反映し、As-Is(現状)を確定させます。
× 悪いフロー図の例
「PCを操作する」「Excelを開く」「入力する」「保存する」のように、操作単位で細かく書かれすぎている。これでは全体像が見えず、担当者が変わると使えなくなる。
◎ 良いフロー図の例
「受注処理」「在庫確認」のように、業務のまとまり(プロセス)単位で書かれている。担当者が代わっても、ツールの操作が変わっても、業務の流れ自体は理解できる。
課題の見つけ方(ボトルネック/ムダ/属人化)
フロー図ができたら、以下の「ECRSの原則」で課題を洗い出します。
| 視点 | 問いかけ | 対策例 |
|---|---|---|
| Eliminate (排除) | その業務、やめたら困る? | 形骸化した承認印、誰も読まない日報を廃止。 |
| Combine (結合) | 一緒にできない? | 入力とチェックを自動化ツールで同時に行う。 |
| Rearrange (入替) | 順序を変えたら楽になる? | 手戻りを防ぐため、承認の前に「形式チェック」を入れる。 |
| Simplify (簡素化) | もっと簡単にできない? | 定型業務を自動化するノーコード活用術やAI導入。 |
標準化・自動化へつなぐ設計
To-Be(理想)のフロー図は、そのままシステム要件定義書の骨子になります。
「この処理は手作業(Manual)」から「システム処理(Service Task)」に置き換える、というマークを付けるだけで、開発ベンダーへの指示書として機能します。
重要なのは、「全ての業務をシステム化しようとしない」ことです。年に数回しか発生しない例外処理は、高額なシステム改修をするより「マニュアル対応(人手)」として残した方がROI(費用対効果)が良い場合が多々あります。
よくある失敗と回避策
フロー図作成における最大の失敗は「細かく書きすぎて更新されなくなる」ことです。
「マウスをクリックする」「画面を開く」といった操作レベルの手順は、フロー図ではなく「操作マニュアル」に書くべきです。フロー図はあくまで「業務の連なり(パス)」を表現するものです。
回避策:
「担当者が変わる」または「システムが変わる」タイミングでのみ、ボックス(処理)を分けるルールにしましょう。
チェックリスト(着手前に揃える)
POAプロジェクトを開始する前に確認すべき項目です。
重要ポイント
チェックリスト
- □ 対象とする業務範囲(スコープ)が決まっている
- □ 現場の業務を一番よく知っているキーマンの協力が得られている
- □ フロー図作成ツール(Figma, Miro等)の利用環境がある
- □ 現状(As-Is)と理想(To-Be)を分けて作成する計画になっている
- □ 例外処理(エラー、差し戻し)を隠さずに洗い出せている
- □ フロー図の粒度(誰が/何を/どうする)が統一されている
- □ 各タスクの所要時間や担当者が明確になっている
- □ 明らかに不要な業務(Eliminate)をシステム化しようとしていないか
- □ 自動化する部分と、あえて人手に残す部分の線引きがある
- □ 作成したフロー図を更新する運用ルールが決まっている
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