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ITコスト適正化の秘訣:無駄なライセンスとインフラ費用の見直し

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Definition

ITコスト適正化とは、単なる削減ではなく、SaaSやインフラの「無駄(未利用・過剰)」を排除し、浮いた予算をセキュリティや新規投資へ再配分する活動を指します。

TL;DR (要約)

ITコストは「見直し対象の可視化」と「意思決定ルール化」で、品質を落とさず削減できます。最初に効くのは、ライセンスの過剰付与・未利用・重複契約と、インフラの過剰スペックです。棚卸し→削減→再発防止(購買/権限/運用)までを一連で設計します。

この記事でわかること

  • ITコストが増え続ける典型パターンについて学べます
  • まずやるべき棚卸し(データ・粒度・責任者)について学べます
  • SaaS/ライセンス最適化(未利用・重複・権限過剰)について学べます
  • インフラ最適化(キャパ/監視/スケール方針)について学べます
  • 社内合意の作り方(削る順番と説明責任)について学べます
  • 再発防止の運用(購買・権限・レビュー)について学べます
  • チェックリスト(すぐ実行できる項目)について学べます

ITコストが増え続ける典型パターン

多くの企業が「気付いたら予算を超過している」状況に陥ります。その原因は大きく3つに分類されます。

  • SaaSスプロール(野良クラウド):現場が独自に契約し、全社的な管理台帳に存在しないツールが増殖している。
  • 過剰スペック(Over-Provisioning):「念のため」で確保したハイスペックなサーバーリソースが、実際には数%しか使われていない。
  • 解約忘れ(ゾンビ契約):退職者のアカウントや、PoC終了後の検証環境が削除されずに課金され続けている。
区分 削減推奨 (Cost Cut) 削減禁止 (Sanctuary)
対象 重複ツール、未利用ID、過剰スペック、開発環境。 セキュリティ対策、バックアップ、DR(災害対策)、人材教育。
理由 業務価値を生まない「浪費」であるため。 事業継続性 (BCP) と企業防衛に必須であるため。

⚠ 【警告】ここだけは削ってはいけない(聖域)

  • EDR / WAF:サイバー攻撃から身を守る最後の砦です。ここを削るとインシデント時の被害額が数億円規模になります。
  • バックアップ / スナップショット:ランサムウェア対策として必須です。「世代管理」のコストは保険料と割り切りましょう。
  • 冗長化構成 (Multi-AZ):本番環境の可用性を担保するコストです。SLA(稼働率保証)を下回る削減は許されません。

これらは悪意ではなく「管理ルールの不在」から生まれます。まずは現状を正しく把握することから戦いは始まります。

まずやるべき棚卸し(データ・粒度・責任者)

コスト削減の第一歩は「誰が・何に・いくら使っているか」の可視化です。

経理部門と連携し、以下の3ステップで棚卸しを行います。

  1. 支払いデータの収集:クレジットカード明細、請求書、代理店契約を全て洗い出す。
  2. 利用者の特定:各支出の「利用部門」と「管理者(責任者)」を名寄せする。不明なものは「IT管理部預かり」として一時停止を検討する。
  3. 粒度の統一:年額払い、月額払い、従量課金をすべて「月額換算」に直し、インパクトの大きい順に並べる。

SaaS/ライセンス最適化(未利用・重複・権限過剰)

SaaSのコストは「ユーザー数 × 単価」です。この両方を最適化します。

着眼点 アクション
未利用 (Inactive) 過去90日間ログインなしのアカウントを特定し、削除または停止する。
機能重複 (Duplicate) 「ZoomとTeams」「SlackとChatwork」など、用途が被るツールを全社標準に統一する。
(参考:野良SaaS利用による機能重複とセキュリティリスク
権限過剰 (Over-Licensed) 「閲覧しかしない人」に編集権限(高額プラン)を付与していないか見直す。

インフラ最適化(キャパ/監視/スケール方針)

AWS/GCPなどのクラウドインフラは、従量課金だからこそ「使いすぎ」が常態化します。

  • ライトサイジング:CPU/メモリ使用率のアベレージを確認し、恒常的に低いインスタンスのサイズを下げる。
  • スポット/リザーブド活用:本番環境のベースロードには「Reserved Instance(1-3年確約)」を、開発環境やバッチ処理には「Spot Instance(余剰リソース)」を適用する。
  • 開発環境の停止:夜間・休日に稼働する必要のない開発・検証サーバーを、自動スケジュールで停止させる(これで約60%削減可能)。

社内合意の作り方(削る順番と説明責任)

いきなり「コスト削減しろ」と現場に命じると、反発を招きます。「品質を維持する」ことを前提に、以下の優先順位で進める合意形成が重要です。

  1. 明らかに無駄なもの(ゾンビ契約、未利用ID):即時停止。
  2. 代替可能なもの(重複ツール):移行期間を設けて統合。
  3. 努力が必要なもの(アーキテクチャ変更、プラン変更):ROIを見極めて中長期で実施。

ROI(投資対効果)の試算例

単に「安くなる」だけでなく、「切替コスト」を含めて回収できるかを数字で示します。

算式:(現在の月額 - 新月額) × 12ヶ月 - 初期移行コスト = 初年度効果

例:グループウェア乗り換え
(50万円 - 30万円) × 12ヶ月 - 100万円 = +140万円 (初年度黒字)

※ 逆に、この計算で赤字になる場合(移行コストが膨大)は、無理に移行せず「現状維持」も正解です。

削減分の一部を新規DX投資や従業員への還元に回すことを約束すると、協力が得やすくなります。

再発防止の運用(購買・権限・レビュー)

一度きれいにしても、半年もすれば元通りです。リバウンドを防ぐ仕組み(ガバナンス)を入れましょう。

  • 購買プロセスの統制:SaaS契約時に、情報システム部門またはセキュリティ担当の承認を必須にする。
  • アカウント発行の自動化:入社・退社フロー(オンボーディング)と連携し、IDの付与・剥奪を自動化またはチケット化する。
  • 定期レビュー:四半期ごとにコストレポートを経営会議に提出し、予実差異の原因を特定するサイクルを回す。

チェックリスト(すぐ実行できる項目)

明日から着手できる具体的なアクション項目です。

重要ポイント

コスト削減は「ダイエット」と同じです。一時的な絶食(無理な削減)はリバウンドします。生活習慣(購買・管理プロセス)自体を変えることが、恒久的な体質改善(コスト適正化)に繋がります。

チェックリスト

  • □ 過去1年間のIT関連支払いの全リストを作成した
  • □ 退職済み社員のアカウントが残っていないか全ツール確認した
  • □ 過去90日ログインしていないユーザーリストを抽出した
  • □ 「閲覧のみ」のユーザーに高額な編集ライセンスを割り当てていないか
  • □ 開発・検証環境のサーバーは、夜間休日に停止する設定になっているか
  • □ AWS/GCPの「Reserved Instance / Savings Plans」の適用率は適切か
  • □ 不要なバックアップ(スナップショット)が無限に保存されていないか
  • □ 類似機能を持つツール(Web会議、チャット等)が重複していないか
  • □ 代理店経由の契約手数料が適正か(直販との比較)
  • □ 紙ベースの業務のためのシステムが残存していないか(POAによる見直し
  • □ コスト削減分を「セキュリティ強化」などの投資に回す計画があるか
  • □ 削減してはいけないコスト(監査ログ、バックアップ)を明確に除外したか

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