システム開発
5 min read

APIファースト開発:フロントエンドとバックエンドの疎結合化

#APIファースト 開発 とは#BFF とは#OpenAPI 運用#フロント バックエンド 疎結合 メリット
Definition

APIファースト開発とは、実装の前にAPI仕様(インターフェース)を定義・合意し、フロントエンドとバックエンドが並行して開発を進める効率的な手法のことです。

TL;DR (要約)

APIファーストは、変更耐性と並行開発を最大化するために「契約(仕様)を先に固める」設計です。OpenAPI等で契約を管理し、BFFでフロント要件を吸収すると速度と品質が両立します。互換性とバージョン管理を運用に落とすことが成功の鍵です。

この記事でわかること

  • なぜ疎結合が必要か(開発と運用の観点)について学べます
  • APIファーストの基本(契約駆動)について学べます
  • OpenAPI運用(変更管理と互換性)について学べます
  • BFFパターン(フロント要件の吸収)について学べます
  • 認証・権限設計(境界の置き方)について学べます
  • テストと互換性の担保(契約テスト等)について学べます
  • チェックリスト(設計前に決める)について学べます

なぜ疎結合が必要か(開発と運用の観点)

モノリシック(一体型)なシステムの最大の弱点は、「画面の修正がDBロジックに影響する」あるいはその逆という依存性の高さにあります。

疎結合(Decoupling)とは、お互いの中身を知らなくても、「インターフェース(接点)」さえ守れば独立して変更できる状態です。

  • 開発速度の向上:BE(バックエンド)が出来上がるのをFE(フロントエンド)が待つ必要がなくなります。Mock(ダミー)サーバーで先行開発できます。
  • 責務の分離:FEは「UI/UX」に、BEは「ビジネスロジックとデータ整合性」に集中できます。
  • リプレイス容易性:「将来的にBEをPHPからGoに書き換える」といった判断が、FEへの影響なしに可能になります。

APIファーストの基本(契約駆動)

APIファーストとは「コードを書く前にインターフェース(契約)を定義する」開発スタイルです。

比較軸 Code-First (従来) Design-First (推奨)
真実の場所 実装コード (Java/Go等) API定義書 (OpenAPI YAML)
ドキュメント 実装から自動生成 (または手動) 最初に定義し、実装を縛る
並行開発 BE完成待ちが発生しやすい 定義完了直後からFE/BE同時着手可

従来のアプローチ(実装ファースト)では、「とりあえずコード書いてからドキュメント化」となりがちで、これだとドキュメントが陳腐化し、外部連携時のトラブルの温床となります。

スキーマ駆動開発の流れ:

  1. 定義 :YAML/JSONでAPI仕様(OpenAPI Spec)を書く。
  2. 合意 :FE/BE双方でレビューし、「このリクエストにはこの型で返す」と握る。
  3. 生成 :ツールで定義書から「型定義ファイル(TypeScript)」と「APIクライアント」を自動生成する。
  4. 実装 :生成された型に従って、FE/BEそれぞれが実装を開始する。

このフローにより、「実装とドキュメントの乖離」が構造的に発生しなくなります。

< div class= "bg-slate-800 text-slate-200 p-4 rounded-lg my-4 font-mono text-sm overflow-x-auto" >

📄 openapi.yaml(Example)

 paths:
      /users/{ id }:
      get:
      summary: ユーザー情報取得
      parameters:
      - name: id
      in: path
          required: true
          schema:
      type: integer
      responses:
      '200':
      description: OK
          content:
      application / json:
      schema:
      $ref: '#/components/schemas/User'
components:
      schemas:
      User:
      type: object
      properties:
      id:
      type: integer
        name:
      type: string
      required:
      - id
      - name 

OpenAPI運用(変更管理と互換性)

API定義書としてデファクトスタンダードなのがOpenAPI (Swagger) です。これをどう運用するかがプロジェクトの命運を分けます。

推奨ツールチェーン(機能別)

用途 推奨ツール 使いどころ
設計・編集 Stoplight Studio / Swagger Editor GUIで直感的にYAMLを編集できる。非エンジニアでも閲覧しやすい。
ドキュメント公開 Redoc / Swagger UI YAMLを読みやすく綺麗なHTMLドキュメントとして表示する。
動作検証 Postman / Insomnia 実際にAPIを叩いてレスポンスを確認する。Collection機能でテストシナリオ管理も可。

変更管理の鉄則:

  • Breaking Change(破壊的変更)の禁止
    「必須パラメータを追加する」「フィールド名を変更する」は、利用側のコードを壊します。
    → 原則、パラメータは「任意(Optional)」で追加するか、新しいエンドポイント(v2)を作ります。
  • Single Source of Truth
    Gitリポジトリで openapi.yaml を管理し、Pull Requestレビューの対象にします。「口頭での仕様変更」は絶対に認めません。
  • 自動化
    CI/CDパイプラインに「Lintチェック(規約違反がないか)」と「クライアントコード生成」を組み込み、人間が手動でファイルをコピーする作業を廃絶します。

BFFパターン(フロント要件の吸収)

疎結合が進むと、汎用的なBackend API(Microservices)と、画面固有の要求(UI)の間にギャップが生まれます。これを埋めるのが **BFF (Backend For Frontend)** です。

Backend APIの責務 BFF (Backend For Frontend) の責務
リソース中心設計 (Resource Oriented) 画面要求中心設計 (Experience Oriented)
正規化されたデータ(User, Order) 画面用に集約されたデータ(マイページ用JSON)
全てのクライアントで共通利用 特定のアプリ/Web画面専用

Next.jsのAPI Routesやエッジ(Workers)でBFFを構築するメリットは、このBFF層として最適です。フロントエンドチームがBFFまで管理(所有)することで、バックエンドチームに依頼せずに「表示データの整形」を完結できます。

認証・権限設計(境界の置き方)

フロントエンドとバックエンドを分離した際、悩ましいのが「認証(Authentication)」です。

推奨パターン:Gateway方式

  • Frontend:認証トークン(Cookie/JWT)を持ってリクエストするだけ。中身の検証はしない。
  • Gateway / BFF:トークンの検証を行い、ユーザーIDを特定する(ここで401を弾く)。
  • Backend:検証済みの「User-ID」ヘッダーを受け取り、ビジネスロジックを実行する。

この「境界」を明確にすることで、バックエンドの各マイクロサービスそれぞれで複雑な認証ロジックを実装する必要がなくなります。

テストと互換性の担保(契約テスト等)

API定義書があっても、実装ミスでバグは生まれます。これを防ぐのが「コントラクトテスト(契約テスト)」です。

Pact等のツールを使う方法もありますが、最低限以下を自動テストに組み込みましょう。

  1. スキーマバリデーション:レスポンスがOpenAPI定義通りかチェックする。
  2. 互換性チェックopenapi.yaml の変更が、破壊的変更(Breaking Change)になっていないか、PR作成時にCLIツールで検知する。

「定義書を直さずにコードを直す」ことをCI(継続的インテグレーション)で物理的に防ぐ仕組み作りが重要です。

チェックリスト(設計前に決める)

APIファースト開発を導入する前の設計チェックリストです。

重要ポイント

最初は「YAMLを書くのが面倒」と感じるかもしれません。しかし、プロジェクト中盤で「仕様確認のチャット往復」が激減し、結合テストでの「繋がらない」トラブルがゼロになる段階で、その投資対効果は絶大なものになります。

チェックリスト

  • □ API仕様書(OpenAPI)の管理リポジトリが決まっている
  • □ 仕様書の変更フロー(誰がレビューし、どうマージするか)が定義されている
  • □ 「破壊的変更(Breaking Change)」の定義と、禁止ルールが合意されている
  • □ フロントエンド用の型定義(TypeScript)の自動生成パイプラインがある
  • □ Mockサーバーの運用方針(検証用データの管理)が決まっている
  • □ エラーレスポンスの形式(HTTPステータスとJSON構造)が統一されている
  • □ 日付・時刻のフォーマット(ISO 8601等)が統一されている
  • □ ID等の採番ルール(UUIDか数値か)が決まっている
  • □ BFFを導入するか否か(クライアントの多様性に基づき)判断した
  • □ 認証情報の受け渡し方法(Header/Cookie)がセキュリティ要件満たしている

参考リンク / 出典

モダンで拡張性の高いシステム開発

Next.jsやクラウドネイティブ技術を活用し、ビジネスを加速させるシステムを構築します。

システム・アプリ開発について