システム開発
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なぜTypeScriptなのか?保守性の高いコードベースの維持

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Definition

TypeScriptとは、JavaScriptに「型」の概念を導入したプログラミング言語です。開発時のエラー検知を可能にし、堅牢で保守性の高いコードベースを実現します。

TL;DR (要約)

TypeScriptの価値は、開発速度を落とさずに「変更に強い」コードへ近づける点にあります。型を境界(API/DTO/フォーム入力)に置くと、事故が減りレビューも効率化します。段階導入と運用ルール(lint/test)で、無理なく移行できます。

この記事でわかること

  • なぜJavaScriptだけでは厳しいのかについて学べます
  • TypeScriptが効く場面(境界・変更・レビュー)について学べます
  • 導入手順(段階移行の進め方)について学べます
  • 推奨tsconfig設定(これだけはONに)について学べます
  • 型設計の勘所(DTO、API、フォーム)について学べます
  • 運用ルール(lint/test/CI)について学べます
  • 失敗例と回避策(any地獄等)について学べます
  • チェックリスト(導入判断)について学べます

なぜJavaScriptだけでは厳しいのか

近年のWebアプリは規模が爆発的に増大しており、人間が全ての変数の中身を記憶しておくことは不可能です。

Before (JavaScript)

function add(a, b) {
  return a + b;
}
// 意図せぬ文字列結合が起きる
add(1, "2"); // "12" 😱

After (TypeScript)

function add(a: number, b: number) {
  return a + b;
}
// コンパイル時にエラー検知
add(1, "2"); // ❌ Error

TypeScriptは、この「実行しないと分からない」を「コードを書いている最中に分かる(コンパイルエラー)」に変えるツールであり、未来の自分やチームメンバーへの説明書をコードに埋め込む行為です。

TypeScriptが効く場面(境界・変更・レビュー)

TSの恩恵を最も感じるのは以下の3つの瞬間です。

  • 境界(Boundary)
    APIからのレスポンスやフォーム入力など、「外部から入ってくるデータ」に型をつけることで、そこから先の実装で「データがあるはずなのに無い(undefined)」というミスを完全に防げます。
  • 変更(Refactoring)
    「Userオブジェクトの namefullName に変えたい」と思った時、JSでは全ファイルをGrepして目視確認が必要ですが、TSならエディタの機能で一括置換でき、修正漏れがあれば赤線で教えてくれます。
  • レビュー(Review)
    「この関数は何を受け取るの?」という簡単な質問をPull Requestでする必要がなくなり、「ビジネスロジックが正しいか」という本質的な議論に集中できます。

導入手順(段階移行の進め方)

既存のJSプロジェクトを一気にTS化するのは危険です。以下の3ステップで進めます。

  1. Level 1: 共存設定 (Allow JS)
    tsconfig.jsonallowJs: true に設定し、既存のJSファイルをそのまま動くようにしつつ、新しく書くファイルだけ .ts で書きます。
  2. Level 2: 境界の型定義
    APIのレスポンスや、共通コンポーネントのPropsなど、影響範囲の大きい部分から型をつけます。内部ロジックはまだ any でも構いません。
  3. Level 3: 厳格化 (Strict Mode)
    noImplicitAny: true を有効にし、全ての変数に型がついている状態を目指します。ここまで来て初めて「堅牢なコードベース」と呼べます。

推奨tsconfig設定(これだけはONに)

堅牢なコードベースを作るための推奨設定です。strict: true を基本とし、さらに以下を有効化します。

  • noImplicitAny: true
    暗黙のanyを禁止し、型の明示を強制する(これを入れないとTSの意味が半減します)。
  • strictNullChecks: true
    null/undefinedの可能性を厳密にチェックする("ぬるぽ"を撲滅する)。
  • noUncheckedIndexedAccess: true
    配列アクセス時にundefinedの可能性を考慮させる(arr[0] が必ず存在するとは限らない)。
  • exactOptionalPropertyTypes: true
    ? 付きプロパティに明示的な undefined 代入を禁止する。

型設計の勘所(DTO、API、フォーム)

「型パズル(複雑すぎる型定義)」に陥らないためのポイントです。

対象 設計方針
APIレスポンス API定義(OpenAPI)からの型自動生成フロー。手書きはメンテナンスコストが高すぎるため避ける。
UIコンポーネント 必要最小限のPropsを定義する。PickOmit などのUtility Typesを使って、元の型から派生させるとDRYになる。
フォーム入力 バリデーションライブラリ(Zodなど)と連携し、実行時のチェックと静的な型定義を同期させる。

運用ルール(lint/test/CI)

TSを導入しても、ルールを守らなければ無法地帯になります。

  • ESLint / Prettier
    「使っていない変数はエラーにする」「インデントを揃える」など、機械的な指摘は人間にさせず、自動化します。
  • CIでの型チェック (tsc --noEmit)
    ローカルでエラーが出ていてもコミットできてしまうため、GitHub ActionsなどのCI上で必ず型チェックを走らせ、エラーがあるPRはマージできないようにします。

失敗例と回避策(any地獄等)

よくある失敗パターンです。

  • 「とりあえずany」問題
    型エラーを消すために any を多用すると、TSのメリットがゼロになります。
    → 回避策:どうしても型が分からない時は unknown を使い、「型ガード(if typeof ...)」を書かないと使えないように制限する。
  • 過剰なジェネリクス
    再利用性を高めようとして Function<T, U, V> のように複雑にしすぎ、誰も読めないコードになる。
    → 回避策:YAGNI(必要になるまでやらない)原則を守り、まずは具体的な型で書く。

チェックリスト(導入判断)

TypeScript導入/運用の健全性チェックリストです。

重要ポイント

TypeScriptは「導入して終わり」ではなく、チームの「共通言語」として育てていくものです。型定義自体がドキュメントとなり、コードレビューの質が劇的に向上する体験をぜひ味わってください。

チェックリスト

  • tsconfig.jsonstrict: true が有効になっている
  • □ CIパイプラインで tsc (型チェック) が実行されている
  • □ 新規開発コードにおいて any の使用が禁止されている(ESLint設定)
  • □ APIレスポンスの型定義が自動生成されている(または一元管理されている)
  • □ ライブラリ選定時に、型定義ファイル(@types)の有無を確認している
  • as (Type Assertion) を安易に使わず、型ガード関数を利用している
  • □ 共通コンポーネントのProps定義にJSDocコメント(説明)が付記されている
  • □ エディタ(VS Code等)の設定がチーム内で共有・統一されている
  • □ チームメンバー全員が基本的なUtility Types(Partial, Pick 等)を理解している
  • □ 定期的に依存パッケージのアップデート(型の追従)を行っている

参考リンク / 出典

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